育児書を捨てよ 赤ちゃんと笑おう その4
その3からの続きです・・・
か「そうですね、もう一度言います。歩くのが遅れる原因は、大きく分けると4つです。
①脳性麻痺、②神経・筋疾患、③精神発達遅滞(全体的な発達の遅れ)、④発達障害、です」
①脳性麻痺については、明かな所見はないと思います。
②神経・筋疾患についても、明らかな所見はないと思います。
・・・診察の際、わずかに低緊張な印象はありましたが、腱反射もしっかり取れますし、いわゆる「本物」の神経筋疾患の方は、こんなレベルの低緊張ではありません。
上記①・②に関しては、もう可能性はなさそうですのでこれ以上は言いません。
③全体的な発達の遅れについてですが、現時点で知的な発達に明らかな問題はないと思います。
「言葉が出ていないこと、バイバイなどをしないのは、知的な遅れ、精神遅滞のせいではないのですか?」
か「先ほども申し上げましたように、1歳前後で有意語が出ないからと言って、それだけで異常とはとれません」
か「次の④発達障害、と、まとめてお話ししましょう」
④発達障害
さて、問題になるのが、また皆さんが一番興味のあるところは、ここかと思います。
発達障害、この場では自閉症と言い換えますが(定義や診断の話をしているのではありませんので、詳しい方はご容赦願います)、自閉症の最大の特徴は、「言語発達とコミュニケーションの障害」です。
1歳で言葉が出ていないのは、全くおかしな話ではありませんので、我々が何をみるのか。
「言葉が出ている」ではなく、「言葉の準備ができている」か、をみるのです。
「言葉の準備」の代表格は、「指さし」と、「機能的なアイコンタクト」です。
トラックが走っているのを見てそれを指さし、ママの顔をみてニヤリとすれば、
「ママ、あれ僕の好きなトラックだよう」とお話ししているのとほぼ一緒です(「叙述」の指さし)。
では、今回のこの子に関してはどうか。
指差しはしませんが、指差しの意味はわかっている(「指さし理解」:指差しを理解していない場合、指の先が指し示すものではなく、指先そのものを見ます)様子でした。
母親に対して、「機能的な」アイコンタクトも見られました。「機能的なアイコンタクト」とは何かというと、詳しい方には(微妙に違うんですけど)「社会的参照」とほぼ同義だと思っていただければよいし、めんどくさいことはすっ飛ばして誤解を恐れずに平たく言うと、母親の顔色を伺っている様子がある、ということだと思って頂ければ良いと思います。
この子は、有意語はまだありませんが、指差しの意味を理解しており、機能的なアイコンタクトもあり、言葉を紡ぐための準備状態(レディネス)は進んでいる印象でした。
はやいか遅いか、と言われれば、「すこしのんびり」ということにはなりますが、一小児科医として「この年齢として、明らかと取れるレベルの言語・コミュニケーションの問題はない」と判断しました。
まとめます。
歩いていないけど、歩くための準備がちゃんと進んでいる。
お話していないけど、お話するための準備がちゃんと進んでいる。
か「ですので、現状としては、明らかと取れるレベルの全般的な発達・言語コミュニケーション面の発達の遅れはありません」
「では、この子は自閉症ではないと、そう考えて良いということですね!?」
・・・ここが難しいところです・・・
いわゆる自閉症の児で、この月齢で「明らか」と取れるケースは、そういないのです。
残念ですが、いくら考えても、この月齢で結論は出ないのです。
「現状としては正常の範疇に入ると思いますが、今後どうなるかはわからないのです。もう一度いいますが、私にできることは、現状として明らかに異常と取れるレベルにあるかどうかの判断です」
同じ月齢で、指さししまくって有意語がたくさん出ていて、スタスタ歩き回っている児と比べれば、発達障害が隠れている確率は高くなるでしょう。
その意味で、「神様しかご存じない」と申し上げた(その2)わけです。
ここまで長々話してきて、結局「わからない」かよふざけんな、と思われたかと思いますが、
実際そうなんですから仕方ありません。神様になれなくてスミマセン。
その5へ続きます・・・
※上記には、川上オリジナルの考え方を多く含みます。児童心理学に詳しい方からすると、いろいろと突っ込みどころがあろうかと思いますが、川上がコツコツと経験してきたこと・学んできたことを、小児科の外来という時間的制約やその他の制限の多い中で生かすために、個人的に系統だててきたことです。「不勉強だが、まあ小児科医の割には頑張ってるな」と笑っていただければ幸いです。
か「そうですね、もう一度言います。歩くのが遅れる原因は、大きく分けると4つです。
①脳性麻痺、②神経・筋疾患、③精神発達遅滞(全体的な発達の遅れ)、④発達障害、です」
①脳性麻痺については、明かな所見はないと思います。
②神経・筋疾患についても、明らかな所見はないと思います。
・・・診察の際、わずかに低緊張な印象はありましたが、腱反射もしっかり取れますし、いわゆる「本物」の神経筋疾患の方は、こんなレベルの低緊張ではありません。
上記①・②に関しては、もう可能性はなさそうですのでこれ以上は言いません。
③全体的な発達の遅れについてですが、現時点で知的な発達に明らかな問題はないと思います。
「言葉が出ていないこと、バイバイなどをしないのは、知的な遅れ、精神遅滞のせいではないのですか?」
か「先ほども申し上げましたように、1歳前後で有意語が出ないからと言って、それだけで異常とはとれません」
か「次の④発達障害、と、まとめてお話ししましょう」
④発達障害
さて、問題になるのが、また皆さんが一番興味のあるところは、ここかと思います。
発達障害、この場では自閉症と言い換えますが(定義や診断の話をしているのではありませんので、詳しい方はご容赦願います)、自閉症の最大の特徴は、「言語発達とコミュニケーションの障害」です。
1歳で言葉が出ていないのは、全くおかしな話ではありませんので、我々が何をみるのか。
「言葉が出ている」ではなく、「言葉の準備ができている」か、をみるのです。
「言葉の準備」の代表格は、「指さし」と、「機能的なアイコンタクト」です。
トラックが走っているのを見てそれを指さし、ママの顔をみてニヤリとすれば、
「ママ、あれ僕の好きなトラックだよう」とお話ししているのとほぼ一緒です(「叙述」の指さし)。
では、今回のこの子に関してはどうか。
指差しはしませんが、指差しの意味はわかっている(「指さし理解」:指差しを理解していない場合、指の先が指し示すものではなく、指先そのものを見ます)様子でした。
母親に対して、「機能的な」アイコンタクトも見られました。「機能的なアイコンタクト」とは何かというと、詳しい方には(微妙に違うんですけど)「社会的参照」とほぼ同義だと思っていただければよいし、めんどくさいことはすっ飛ばして誤解を恐れずに平たく言うと、母親の顔色を伺っている様子がある、ということだと思って頂ければ良いと思います。
この子は、有意語はまだありませんが、指差しの意味を理解しており、機能的なアイコンタクトもあり、言葉を紡ぐための準備状態(レディネス)は進んでいる印象でした。
はやいか遅いか、と言われれば、「すこしのんびり」ということにはなりますが、一小児科医として「この年齢として、明らかと取れるレベルの言語・コミュニケーションの問題はない」と判断しました。
まとめます。
歩いていないけど、歩くための準備がちゃんと進んでいる。
お話していないけど、お話するための準備がちゃんと進んでいる。
か「ですので、現状としては、明らかと取れるレベルの全般的な発達・言語コミュニケーション面の発達の遅れはありません」
「では、この子は自閉症ではないと、そう考えて良いということですね!?」
・・・ここが難しいところです・・・
いわゆる自閉症の児で、この月齢で「明らか」と取れるケースは、そういないのです。
残念ですが、いくら考えても、この月齢で結論は出ないのです。
「現状としては正常の範疇に入ると思いますが、今後どうなるかはわからないのです。もう一度いいますが、私にできることは、現状として明らかに異常と取れるレベルにあるかどうかの判断です」
同じ月齢で、指さししまくって有意語がたくさん出ていて、スタスタ歩き回っている児と比べれば、発達障害が隠れている確率は高くなるでしょう。
その意味で、「神様しかご存じない」と申し上げた(その2)わけです。
ここまで長々話してきて、結局「わからない」かよふざけんな、と思われたかと思いますが、
実際そうなんですから仕方ありません。神様になれなくてスミマセン。
その5へ続きます・・・
※上記には、川上オリジナルの考え方を多く含みます。児童心理学に詳しい方からすると、いろいろと突っ込みどころがあろうかと思いますが、川上がコツコツと経験してきたこと・学んできたことを、小児科の外来という時間的制約やその他の制限の多い中で生かすために、個人的に系統だててきたことです。「不勉強だが、まあ小児科医の割には頑張ってるな」と笑っていただければ幸いです。