ハナちゃんのこと
最近、とある猫関係の雑誌で、「猫には寂しいという感情はありません」と書いてあってとても驚いた。
私が天の邪鬼だからというわけではないが、どう考えてもそんな筈はない。当院のロゴマークのモデルとなった、おでこにハートの模様がある「ブンジ」(現在使用しているエコーの愛称にもなっている)は、先住猫で仲良しであった「あんこ」(私の最愛の、お団子鍵尻尾でキジトラの女の子!)が亡くなったとき、しばらくはどう見ても元気がなく、食欲もなくって心配になったものだった。猫が寂しいと感じないなんてどう考えても嘘だ。科学的に学問的に検証すれば、寂しいという感情は無いという結論になるのかもしれないけど、飼い主の直感としてはどう考えても嘘だ。
このたび、我が家の「ハナ」が亡くなった。家人の実家から引き取ってきた猫で、我が家の猫軍団の中では新参者であった。とはいえ、我が家の一員になってもう9年以上になる。両鼻から鼻水が垂れている様な、いなかっぺ大将の涙みたいな(・・・若い人は知りませんよねスミマセン)模様が特徴的な、個性的な白黒猫。人の通り道でおなかを出してひっくり返っていたりする物怖じしない性格で、すぐに我が家一の面白キャラとして確固たる地位を確立した。
ハナを引き取ったとき、ハナの母猫である「タマ」も一緒に我が家に迎えたのだが、タマちゃんは家族になってから3年程で亡くなった。ハナちゃんはタマちゃんにいっつもベッタリで、あまり我々人間どもには関心がない印象だったのだが、タマちゃん亡き後のハナちゃんはしきりに人間に話しかけるようになり、少し甘えてくれるようになった。ほら、猫もやっぱり寂しいのだ。
タマちゃん、あんちゃん、ピーちゃん、そして今回のハナと、みんな結構な年だから仕方のないことではあるのだが、最盛期?は6名の陣容を誇った我が家の猫軍団は、ブンジと「クロ」の2名のみに減ってしまった。片づけられない、家主のいなくなったケージを見ていると、つい寂しさが込み上げてくる。最近のブンジは、ピーちゃんのケージを第二の我が家のように使い、自分のケージでご飯とトイレ、ピーちゃんのケージは寝るところと決めているようだ。図々しい奴め。
「猫には寂しいという感情はありません」 確かに、そう書いてあった。
冷たくなったハナの頭を撫でながら、なぜかこの事を思い出していた。寂しいという感情が無いのなら、ハナも、自分が亡くなる瞬間に寂しいとか、別れが悲しいとか、そんな辛いことを感じずにいれたのだろうか。それなら、猫には寂しいという感情は無くってもいいや。そして、ついでにだけれども、「人間にも寂しいという感情はありません」って書いてくれると、もっと有り難いんだけどなあ。