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インフルエンザの診断 その8【「痛い」インフルエンザ検査、何とかならんとですか! その4「鼻かみごときで出るんなら苦労せんかろーもん」】

その7からの続きです (最初から読む:その1へ)

「鼻汁鼻かみ液」は、清潔なラップなどに鼻をかみ、取れた鼻水を綿棒に取って検体とする方法です。

もちろん、自分で鼻をかめない小さなお子さんや、鼻水が出ていない患者さんでは選択できません。

ただ、鼻がかめる状態なら、鼻をかんで出すだけですので、全く痛くありません。

そんな楽な方法があるのなら最初からそう言ってよ・・・それでお願いします・・・

我々医者だって、患者さんになるべく痛い思いをさせたくありませんので、痛くなくて効果の高い方法であれば、それを選択します。

そんないい方法なら、医者はこぞってそれでやるはずですが、ほとんどの医師はこの方法を行わず、「あえて」鼻腔拭い液を選択します。

では、ちゃんと検査の説明書にも載っている、鼻腔拭い液よりもずっと楽なこの方法、ほとんどの良心的な臨床医がやらないのは何故か。

話は簡単、効果が一緒じゃないからです。「感度が低いから」です。

感度が低い、というのは、きちんと検査キットの説明書にも記載してあります。

「咽頭拭い液、鼻汁鼻かみ液を検体とした場合、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液に比べ検出率が低い傾向にありますので、検体の採取方法にご留意下さい」

てか、そんなことをいちいち調べなくても、インフルエンザウイルスが沢山いる鼻の奥をあれだけこそげた挙げ句に陰性に出ちゃう場合があるってのに、ウイルスのいるところを通っただけの、つまり鼻腔の奥よりもずっとずっとウイルス濃度が低いはずの鼻水で、偽陰性の確率が多くなるのは感覚的にも当たり前の話です。

富士山と高塔山(※)を比べたら高塔山の方が低い!、とか言っているようなレベル。

ですので、もちろん当院でも、原則として鼻汁鼻かみ液は使用しません。

続く:その9


※)高塔山は、北九州市若松区にそびえる標高124mの山で、山頂の公園からは、皿倉山をはじめとする帆柱連山と、かつて四大工業地帯として名をはせた八幡・戸畑の町並みを背景に、洞海湾とそこに架かる若戸大橋の美しい景色が一望できます。何せ標高があまり高くありませんから、手に取れそうなぐらい近く感じるんですよ、若戸大橋が、町並みが。天気が良いと、遠く富士山まで見渡せます(嘘)。北九州市民(とくに若松区民)の憩いの場であり、工場群の夜景も素晴らしいのですが、夜になるといわゆる「やんちゃ」な方々が沢山いらして治安が微妙になるのが玉に瑕(今はどうか知りませんスミマセン)。

インフルエンザの診断 その7【「痛い」インフルエンザ検査、何とかならんとですか! その3「別の取り方も、あるにはあるっちゃけど」「けど?」】

その6からの続きです (最初から読む:その1へ)

というわけで、ある程度「妥協して頂かないと(スミマセンスミマセン)」な、鼻腔拭い液。

では、他の検体採取方法はどうでしょうか。痛くないんなら、その方法でやってもらえんですかね。

検査の説明書なんかにもきっちり書いてありますが、その他の方法としては、

 ・咽頭拭い液
 ・鼻腔吸引液
 ・鼻汁鼻かみ液

があります。

「咽頭拭い液」は、簡単に言うと鼻からではなく、口から綿棒を突っ込んで、のどの奥にいるウイルスをこすり取ってくる方法です。

しっかり取ろうとすると、かなり「おぇっ」となりますし、不快さで言えばまあ鼻腔拭い液とどっこいどっこい、目くそ鼻くそ、うん○味のカレーとカレー味のうん○(失礼)、というやつです。

検査の感度(出やすさ)も、「鼻腔拭い液」より劣りますので、あえて選択する意味合いはありません。

ただし、一緒に溶連菌検査も採取する場合なんかだと、あえて鼻からは採取せず、溶連菌と一緒に咽頭拭い液で済ませてしまう場合もあります(※)。

「鼻腔吸引液」は、鼻に吸引チューブを突っ込んで、鼻の「奥に」たまっている鼻水をチュルチュルと吸引し、それを使用する方法です。

綿棒より太いチューブを鼻の「奥に」突っ込むわけですから当然、鼻腔ぬぐい液を採取するのと同等以上の負担がかかります。

医療機関側としても、吸引器を準備する手間、吸引チューブ(患者さんごとに新品に交換します)のコストなど、余計な負担がかかります。

同時に吸引処置をした、などでなければ、あえて選択するメリットはありません。

さて、問題なのが「鼻汁鼻かみ液」です。

続く:その8

※)溶連菌は比較的浅いところにある口蓋扁桃(ノドのわきにある、へんとうせん)をこそげて採取しますので比較的楽ですが、インフルエンザはきっちり咽頭後壁(ノドの一番おく)から採取します。ですので、厳密には一緒にではなく、綿棒は口の中に同時に入れますが、検体採取操作は別々にやることになります。

インフルエンザの診断 その6【「痛い」インフルエンザ検査、何とかならんとですか! その2「鼻ぐりぐり、なるべく痛くないようにするけんね!」】

その5からの続きです (最初から読む:その1へ)


インフルエンザの検査と言えば、綿棒をお鼻の穴から奥まで突っ込む、いわゆる「ハナぐりぐり」かと思われがちですが、検体の採取方法には、何通りかあります。

「ハナぐりぐりぐりぐり」は、「鼻腔拭い液」と言いまして、綿棒を、インフルエンザウイルスが一番多い、鼻腔の奥までそーっと入れて、まさにそこに居るウイルスをこそげ取る方法です。何故ぐりが増えたし?

これを出来るだけ痛くないように採るコツはいくつかありますが、よく言われるのが「ゆっくりソーッと入れる」「鼻腔底をはわせる(鼻腔の下の壁に沿って入れる)」です(※1)。

これは意外と(※2)?、偉い人の言われているその通りです。

毎年するインフルエンザワクチンと同様、自分で何度も試しております。

何回やったかいちいち数えてはいませんが、検査キットが発売されて以降、で言うと、それこそ何百回の話です。

診察終了後の静まりかえった診察室で一人、自分の鼻に綿棒を突っ込んでもだえるアラフィフ(おっさん)。じっと手をみる。

鼻腔底をはわせて挿入すると、無理矢理こちょこちょされるような軽い不快感はありますが、どうしようもなく痛いでたまらんち、という程ではなく済みます。

これが、ちょっと上の方に触れるように挿入すると、急に「つーん」ときます。

当然、個人差もありますし、小さいお子さんだと「鼻の穴になにやら突っ込まれる」という時点で、痛い痛くない・不快不快じゃない関係なく泣いてしまいますが・・・。

ああ、これはたしかにちょっと痛いかな、というのは、鼻の一番奥に到達する瞬間です。

ここを思いっきりやると、「つーん」じゃなくて、「(あ)かーん」といった感じで「きます」。

ここをなるべくソフトランディングさせ、鼻腔の奥にある鼻汁が綿棒先端に染み込むよう少し待ち、抜く瞬間に軽くこさぎながら(※3)抜く、というのが、痛みとウイルス採取量との一番バランスの取れるところかな、と(現時点では)思っております。

ただし結局のところ、「どうせやるなら、ウイルスがたっぷり取れるようにやる」のが一番大事であって、「痛いけど我慢して(スミマセンスミマセン)」とならざるを得ないこともあり、スミマセンスミマセン。

続く:その7

※1)もちろん、状況によって臨機応変な対応をします。暴れる子にそーーーーっと入れるわけにはいきませんし、どうしても途中で抵抗がある場合もありますので、すこーし力を入れて挿入せざるを得ないこともあります(「抵抗がある場合は、反対側の鼻孔で施行するとうまくいくことが多い」などと書いてある場合もありますが、実際の場で途中まで綿棒入れておいて、「ごめんなさい、こっちスムーズに入んないから反対でやり直しますわ」と言えますか?)。
※2)ちなみに、予防接種をできるだけ痛くないようにするコツはこれとは逆で、すごく簡単に言うと「いかに速く注射をすませるか」です。教科書的な本などに、「できるだけゆっくり注入する」などと書いてある場合がありますが、「ひえー、偉い先生やから自分で自分を刺してみたりせんのやろなぁ~」と生意気にも思っておりますです。機会があれば、これについても書いてみたいですが・・・
※3)「こさぐ」は、自分ではいつの間にか標準語だと思いこんでいましたが、九州山口あたりの方言で、「削り取る」「擦り取る」みたいな感じの意味です。

インフルエンザの診断 その5【「痛い」インフルエンザ検査、何とかならんとですか! その1「僕ちゃん、やるときはやる男ですけん!」】

その4からの続きです・・・  (最初から読む:その1へ)


インフルエンザの検査はあんまり楽なもんじゃありません。

でも、上述したとおり、どうせやるんならウイルス量がしっかり取れるようにやらなければいけません。

以前の記事でも多少触れておりますが、検査に対する私のスタンスは「侵襲は最小限に、でも必要なときは確実に」です。

検査(侵襲)は、回避できるなら出来るだけ回避できる方法を模索しますが、検査が必要と判断すれば、どうせやるんだったらしっかりやらねばなりません。

「嫌って言ったら検査しないでくれた!」は、そのときのお子さんにとっては「優しいお医者さん」になれるかもしれませんが、必要な検査が出来なかったのであれば、長い目で見れば優しいどころかとんでもない話です(※)。

「なるべくやらない。可能であれば回避する。でも、やるときはやる」です。

「あいつ普段は虫も殺さん感じで大人しいけど、喧嘩はめっちゃ強いんやで」とか、「私、○いだら凄いんです」とか、そんな感じ? ちょっと違うか。下品な言い方で申し訳ございません。

検査をするにしても、なるべく痛くないように、でも、最大限の検査結果が得られるように、これを両天秤にかけて、ぎりぎりのバランスのところを狙います。

それが、私のような町医者ごときが申し上げるのは筋違いかもしれませんが、小児科医の腕の見せ所の一つだと思っております。

もちろん、そう簡単にいかないことも多々ありますが、常に立ち位置をそこに置く意識を持っておかねばならないと、そう愚考しております。

ちなみに、私の「武器」であるエコー検査は、少ない侵襲でとんでもなく大きな検査結果が得られる、小児科医としては理想の武器の一つと思っておりますですハイ。

なんだかこの回は説教くさくなってしまいました。申し訳ありません。

続く:その6

※)そんなこと言うのなら、泣いているお子さんは診察しないで症状だけ聞いて「じゃ薬出しときまーす」で終わればいいや、って話になります。それどころか、薬も飲みたがらないから出しません、なんて優しいお医者さんなんでしょう!・・・??

インフルエンザの診断 その4【検査するからには、陽性(プラス)を目指す!】

その3からの続きです (最初から読む:その1へ)

ですので、インフルエンザ検査をするからには、出来るだけ陽性になるように(見逃しがないように)努力をします。

実に単純な話ですが、採取できたウイルスの量が多ければ多いほど、検査は陽性にでやすくなります。

ですから、検体を採取するときは、出来るだけ沢山ウイルスが取れるようにします。

よくいう、「発熱から12時間以上経たないと・・・」とか言うのは、発熱から時間が経つほど、鼻の奥の方に居るインフルエンザウイルス量が増え、検査で陽性に出やすくなるからです。

最近の検査キットは初期ものと比べると感度がかなり良くなっていますので、発熱後3-4時間もすればあまり経過時間にこだわらなくても良いようになってきました(もちろん、時間が経ってウイルス量が増えれば増えるほど、陽性に出る可能性が高くはなりますが)。

当院では、写真の技術を応用し少ないウイルスを「増感」して検出が可能な、「富士ドライケム IMMUNO AG1」を使用し、しかも、それを3台(※)同時に稼働させています。
三兄弟AG1 
おやびん、こびん、そのこびん


検査が「偽陰性(本当は陽性なのに陰性に出てしまう)」に出る理由は、「ウイルス(の量)がしっかり取れたか」の、採取方法の問題が最も大きいと考えます。

どうせやるんだったら、出来るだけ偽陰性(実際はインフルエンザなのに検査が陰性にでてしまう)が少ないように検査せねばなりません。

続く:その5


※)「だんご三兄弟」ならぬ、「フジ3兄弟」。1号機が「おやびん」(親分)、2号機が「こびん」(子分)、3号機が「そのこびん」(その子分)と密かに名付けています。ちなみに、だんご三兄弟が流行したのが平成11年、検査キットがはじめて市販された年で、まだリレンザもタミフルも無い時代でした。なんだか、つい昨日のことのような気がするよ・・・


インフルエンザの診断 その3【インフルエンザ検査の意義】

その2からの続きです (最初から読む:その1へ)

「診断が確実になる」

インフルエンザ検査のメリットは、一言で言うとこれに尽きます。

上述したとおり、インフルエンザの診断は、それまで「いい加減なもの」でした。

診察所見では「決定打」が無いインフルエンザが、検査をすることでその場で自信を持って確定診断することがきるようになったのです。

「診断が確実になる」、これを診断する医師の立場から言わせていただくと、医者も人の子ですから、いくら自分の診断技術に自信があっても、その診断に根拠や裏付けが少しでも多くあった方が安心なのです(※)。

 いしゃ「インフルで間違いないと思うけど・・・誰か、お前は正しいって言って!」

 けんさ「インフルエンザA陽性だよ・・・大丈夫、自分に自信を持って!(松岡修造風)」

では、「診断が確実になる」、これを医者個人としてのメリットではなく、患者さん側や公衆衛生的なメリットとして言うとどうか。

症状が今ひとつ典型的でなく、検査のない時代であれば「(本当はインフルエンザなのに)えーい、インフルじゃないことにしちゃえー」となる可能性のある患者さん達を、「やっぱりインフルでした」と「確実に診断」し、早期に治療して重症化を防ぎ、感染拡大を防止することが出来る、ということであります。

つまり、「インフルかどうか、はっきり分からんね」状態の人たちを、「症状は微妙だけど、確実にインフル。もう、絶対」と診断できるのが、インフルエンザ検査の最大のメリットです。

ということは、インフルエンザの検査とは、出来るだけ見逃しがないように、出来るだけ陽性(プラス=インフルエンザであると診断)になることを狙ってする検査だということです。

「症状は微妙だけど、本当はインフル」の患者さんたちを検査して、「検査も陰性(マイナス)でした」となるようでは困るのです。

続く:その4へ~


※)勤務医の頃、当直の時に研修医の先生が「つく」ことがありました。一緒に当直するのですが(一緒のベッドで寝るわけではありません、当たり前田)、たとえなりたてホヤホヤの研修医であっても、自分以外に、医師としての医学的知識を元に会話のできる相手がいてくれるのは、本当に有り難かったものです(まあ、うっとおしいこともありますが)。教えているつもりで、「ね、ボク正しいよね、ねっ、そうでしょ?」と、自分の診断や治療の正当性を確認する作業をしていたのです。

インフルエンザの診断 その2【検査キットと治療薬があらわれた!】

その1からの続きです・・・


検査キットと治療薬があらわれた!

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冗談はさておき、インフルエンザの検査キットが初めて発売されたのは、平成11年です。

本来はパーキンソン病の治療薬であるアマンタジン(シンメトレル)が、インフルエンザA型に効果があると認可されたのが平成10年11月、リレンザが発売されたのが平成12年、タミフルが平成13年です。

私が医師免許を取得したのが平成8年5月ですから、そのときにはまだインフルエンザは、「雰囲気で診断して、自然に治るのを待つ」しかない病気だったのです。

タミフルも検査キットもなかったなんて、今からすると「どんな原始時代だよ」てな感じですが、まあ私の研修医時代はそんな時代だったわけです。

この検査キットと治療薬という二大スターが誕生して以来、インフルエンザの臨床は劇的に変化しました。

それまでの、「雰囲気で診断して、自然に治るのを待つ」から、「確実に診断して、積極的に治療する」時代へと変わったのです。

治療の話となると、おなじみタミフルリレンザから、さらにはドラクエの最強呪文みたいな名前の新薬の話題(※1)とか、異常行動との関連はどうなのかとか(※2)、話の内容が果てしなく広がっていきますので、今回はタイトル通り「診断」に絞って話をしたいと思います。

まあそのような、素晴らしい、画期的・革命的な検査キットなのですが、実際に検査を施行する我々臨床医にとっては、いくつか困った点もあります。

小児科医としては一番困るのが、やっぱり、「あんまり楽な検査じゃない」ということ。

それと、「インフルだと思うけど検査は陰性(マイナス)」になることがあること。

さらには、「症状も(あんまり)ないのに検査しちゃったら陽性(プラス)」というのも。

いずれも、検査キットがなければ、「はいはいインフルインフル(あるいはインフルじゃないっす)」と診断して終わっていたはずなのに、です。

続く:その3


※1)すでに製造販売が承認されている「アビガン」(ただし、新型インフルエンザが流行したときなどの緊急時の場合のみ製造が可能という条件付きで、実際には処方できない。一般の方にはインフルエンザと言うよりも、エボラの治療薬としての方が有名かも)、近く承認が見込まれている「ゾフルーザ」。メラゾーマどころじゃないこの最強感。
※2)一般的な一小児科開業医として、私のスタンスは「異常行動と抗インフルエンザ薬との関連は否定的である」ですが、このような軽薄なブログで軽々に扱う話題ではないと心得ております。

インフルエンザの診断 その1【インフルエンザの診断その昔】


インフルエンザという病気がいつから存在するのかは知りませんが、おそらくはほぼ人類の歴史とともにあるようなものと思います。

ウイルスという概念自体が出てきたのがここ一世紀ちょっとぐらい前からですし、インフルエンザウイルスが発見されたのも、人類の長い歴史から言えば本当に最近のことです(※1)。

で、もちろん昔には、インフルエンザの検査キットもなければ、タミフルリレンザなどの治療薬もありません。

インフルエンザには、「これぞインフル!」と言える、決定的な症状・所見はありません。

水ぼうそうの発疹(※2)みたいに、医者の診察でこれさえあれば診断がつく、というような症状・所見があれば良いのですが、インフルエンザの症状・所見は「高熱」「全身倦怠感」「関節痛」とか、「非特異的」(他の病気でも十分あり得る)な症状ばかりで、単にその症状の「勢いが強いことが多い」だけです。

ですので、インフルエンザという診断自体もあいまいですし、治療も「対症療法」(症状に応じた治療)のみで、基本的には「治るのを待つ」「体力が回復するのを待つ」しかありませんでした。

どうやってインフルエンザを診断していたのかというと、インフルエンザが流行っている時期に、インフルエンザっぽい高熱、全身倦怠感、頭痛、関節痛などの症状がある場合に、「はいインフルっす(違うかもしれないけど、まあだいたい合ってるっしょ)」と診断するものだったのです。

そんないい加減な、と言われても、そういうものでしたから仕方ありません。

インフルじゃないかもしれないけど、どうせインフルエンザであってもその他のカゼ(ウイルス感染症)であっても、いずれにせよ薬もありませんし。

インフルエンザであると、肺炎・中耳炎、脳炎/脳症などの合併症のリスクも高くなりますし、社会的にも感染防止策に努めたいので、区別できるのならしておきたいのは山々なのですが、(外来でできる)検査もありません(※3)。

ですので、「あやしければ念のため悪い方のインフルエンザと言っとく」。

で、「よく様子を見る」「社会的にインフルエンザ扱いして感染拡大防止に努める」ように仕向けるわけです。

インフルかそれ以外のおカゼかを区別することに躍起になるよりも(というかその方法そのものが無かったわけです)、脱水がないかなどの全身状態の把握の方が大事ですし、さらにはその他の溶連菌感染症などの細菌感染症、川崎病や血液疾患、膠原病などの「カゼ以外の熱が出る病気」を鑑別することが、むしろ重要になります。これは、今でも変わりません。

インフルエンザですよ、と言っておいて、川崎病だったとか白血病だったとかでは大変ですので、そういった「(インフルエンザを含むウイルス感染症系以外の)他の病気では(現時点では)なさそう」という判断がとても重要だと言うことです。

続く:その2へ~


※1)赤ちゃんが受けるワクチンに「ヒブワクチン」がありますが、あの「ヒブ(Hib)」はHaemophilus influenzae(インフルエンザ菌) type bの略で、この菌が発見された当初「こいつがインフルエンザの原因じゃね?」とされて、こう名付けられたのです。違うってわかったんなら変えりゃいいと思うんですけど、偉い人の間では色々な事情もあってそうはいかんのでしょうね(あるいは面倒くさいだけとか?)。
※2)最近、水痘(水ぼうそう)の検査キット(水痘・帯状疱疹ウイルス抗原キット:デルマクイックVZV)が発売されました。水ほう(発疹)の中にいるウイルスを検出(水ほうの内容液を綿棒で採取して検査)するものですが、近い将来、水ぼうそうもインフルエンザのように検査で診断する時代が来るのでしょうか(個人的にはそうはならないと思いますが・・・)。「水ぼうそうで間違いないと思うんですけど、検査は陰性で・・・」と患者さんに申し訳なさそうに説明する未来の小児科医の姿が目に浮かび、何となく切ない気分になります。
※3)私が研修医になった頃の時代であれば、「ウイルス分離」という検査方法があるにはありましたが、結果が出るまで1週間とか2週間とか下手すると1ヶ月ぐらいかかって、結果が出た頃の患者さんにとっては「何を今さら・・・」です。

エコー 新機種(GE社製LOGIQ P7)導入しました

ブンジとピーちゃん
左が新機種LOGIQ P7(愛称:ブンジ)、右がこれまでの愛機LOGIQ P5(ピーちゃん)


当院の最大の「売り」(と私は勝手に思っている)であるエコー(超音波)検査。
これまで、かかりつけの皆様方には御馴染のLOGIQ P5(ピーちゃん)が活躍してまいりましたが、この度、さらなる検査精度向上を目指し、新機種を導入いたしました。

平成29年12月24日(日)に搬入、翌25日に実際の診療での運用を開始いたしました。
これまでの15インチ液晶モニタから、大きな21.5インチワイドモニタとなり、画像も見やすく画質も格段に向上し、使い勝手に関わる「スピード」も速くなりました。
これまでより一層、患者様がたのお役に立てることと存じます。

10月末にデモ機(LOGIQ P9proという上位機種ですが、事実上ほぼ一緒)を一週間ほどお借りし、使用方法の違いにある程度慣れ、設定などもおおよそ詰めておりましたので、実際の導入に際してもほぼトラブル無くスムーズに行うことができました。
それでも、本格導入の細かな問題に対応するため、(いざというときは直ちにピーすけを使用できるよう)診察室内に新機種とピーすけを同居させてきましたが、導入後約1か月半を経過しほぼ問題なく使用できることが確認できましたので、ピーすけを「後方に下げる」ことにいたしました。
ついにブンジが独り立ちです。

なお、本当は12月8日(金)に納入されるはずだったのですが、直前になって急に延期となりました。
業者さんの説明だと、「ソフトウェアのバージョンアップのため」とのことで、申し訳なさそうに納入延期のご説明にいらしていましたが、私としてはガッカリするよりも、なんとなく「まだピーすけと一緒に居られるんだ」とちょっとホッとしたのを覚えています。

ピーすけもまだまだ戦えます。あと5年は余裕で戦えると思う。
物凄い使用頻度(※)ではありますが、大事に大事にそれは可愛がって使ってきましたので、まだ結構ピカピカきれいな状態を保っています。
また、勤務医(関東労災病院)時代から数えると、ゆうに10年以上はLOGIQ P5と付き合ってきましたので、いまだ無意識にP5操作時の「手の動き」をしてしまうことがありますが、これもいずれ慣れてしまうことでしょう。
大事な相棒だったピーすけを触らなくなるのは寂しくもありますが、診察室ですぐ行えるエコー検査は当院の最大の「売り」(としつこいようですが私は勝手に思っている、いや信じておりますです)ですので、画質の問題や陳旧化に伴う故障リスクの対応も含め、器機更新は避けて通れない問題です。
開院3年ぐらい経った頃から、更新を検討してきましたので、そろそろいいよね、ピーすけぇ・・・

ピーすけは下取りに出したりせず、当院内に「控え」として待機することになります。
ブンは診察室内に鎮座しそんなに移動させることは無いと思いますので、点滴室などでエコーをする際にピーすけを使うことがあろうかと思います。
隅っこの方で寂しそうにしているピーすけを見かけたら、「お疲れさま」とか「まだまだいけるやん」とか、(心の中で)声をかけて頂けると幸いです。

また、これまでのピーすけ同様、新たに院長の片腕となるブンジ(LOGIQ P7)をよろしくお願いいたします


※開院以来、一度もエコーを使用しなかった日というのは記憶にありません。だいたい日に7-8件、多いと20件ぐらい検査を行うこともあります。なお、ゲスな話で恐縮ですが、そのうち1/3位は3歳未満、いわゆる「マルメ」での検査です(検査費用として請求できないわけですが、エコー大好きな私はそれでも喜々としてやっておりますです)。
ちなみに、なんでピーとかブンジとか名付けているのかというと、単にうちの歴代ネコsの男の子の名前から取っているとかいないとか


プロフィール

かわかみあきひろ

Author:かわかみあきひろ
川崎市高津区子母口497-2子母口クリニックモール2階
かわかみ小児科クリニック
小児科・アレルギー科
院長  川上 章弘

詳しいプロフィールについては、
かわかみ小児科クリニック公式HPの院長紹介
をご覧ください。

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