今シーズンのインフルエンザワクチンについて & 当院のチメロサールに対する考え方(再掲)
インフルエンザワクチンのシーズンが近づいてまいりました。
当院では、10月2日(金)からの接種開始を予定しております。
こちらでのご案内が遅くなってしまいましたが、既に9月18日よりご予約を承っております。
ご予約の方法や金額等、詳細につきましては、当院ホームページの案内をご覧ください。
インフルエンザワクチンで、よく質問されることの一つに、「チメロサール」があります。
当院HPや当ブログを通じ、当院のチメロサールに対する考え方は、繰り返し申し上げてきておりますが、
シーズンを前に、「チメロサール」に対する当院の考え方を、改めて申し上げておきたいと思います。
チメロサールはごく微量で強い殺菌作用を有する水銀化合物で、不活化ワクチンの防腐剤として用いられています。
当院で採用しているインフルエンザワクチンは、チメロサールを含むワクチンです。
当院に限らず、通常「インフルエンザワクチン」として接種されるワクチンには、通常このチメロサールが含まれます。
「インフルエンザワクチン(チメロサールフリー)」と但し書きがなければ、当たり前のようにチメロサールが含まれているとお考えください。
①チメロサールの何が悪いのか?
かつて海外での研究において、チメロサールと発達障害の関連性が疑われたことがあり、日本でもマスコミ報道などにより話題となりました。
ただし、現在ではすでに疫学研究でその関連性は完全に否定され(関連性を指摘した論文自体が取り下げられています)ており、科学的根拠の全くない「悪質なデマ」です。
つまり、チメロサールの何が悪いのかと言うと、「別に何が悪いってわけじゃないんだけど、何となく気持ち悪い」ということです。
勿論、発達障害との関連性がないとはいえ、余計なものを体の中に入れるのは極力避けたほうが良いですから、可能な限りチメロサールが入っていない(チメロサールフリー)ワクチンを使用するに越した事はありません。
当院で現在使用しているワクチンも、インフルエンザワクチンを除き、公費・自費のものともチメロサールフリーとなっています。
②チメロサールが入っていないと何が困るのか?
チメロサールは、極めて優れた不活化ワクチンの防腐剤です。
チメロサールフリーのワクチン、ということは、(効果の高い)防腐剤が入っていないということです。
一本のビン(バイアル)のワクチンを複数人で分割して使用する(例:1ml入りバイアルを0.5mlずつ2人分として使用する、など)場合、汚染が問題になります。
チメロサールフリーのワクチンでは、一度針を刺したバイアルは内容物の無菌性が保持できませんので、余りがあっても使用せず破棄しなければなりません。
例えば、当院で現在使用しているワクチン(インフルエンザワクチンを除く)の中で、一瓶に二人分以上の量が入っているものはB型肝炎ワクチン(ヘプタバックス-II 10μg)のみですが、当然一回で使い切り、余りは使用せず破棄しております。
一本のバイアルを一人で使い切るなら、チメロサールフリーのもので全くかまわないのです。
チメロサールが入っているのは、一本のバイアルを、複数人で分割して使用するためであると言えます。
③チメロサールフリーのものを、1バイアル一人一回で使い切れば良いのではないか?
全くその通りです。他のワクチンではそうしているように、インフルエンザワクチンも1バイアル一人一回にすれば済むことです。
ただし、インフルエンザワクチンは、ある一定の限られた流行期間を狙って、短期間で大量に製造され、短期間で大勢の方に対して接種されるワクチンです。
そのようなワクチンを「一人一本使い切り」のコンセプトで製造するのは、コスト面、供給量の面で非常に厳しくなります。
チメロサールフリーのインフルエンザワクチンも販売されていますが、当然高価になりますし、供給量も限られたものになります。
全てチメロサールフリーに出来れば理想的ですが、接種価格をかなりお高くせねばなりませんし、それ以前に供給自体がまず追いつかないでしょう。
以上より、インフルエンザワクチンにつきましては、原則としてチメロサールを含むワクチンを使用させていただくのが現実的かと考えます。
当院では今後も、考えうる限りの安全性の確保、ならびに、出来るだけ気軽に接種していただける様な価格の設定(ただし、プロが責任を持って行う医療行為ですから、嘘みたいに安い値段にはなりません・・・)に努めて参ります。
皆様のご理解、ご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。