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先天性股関節脱臼の発見が遅れるのは小児科医のせいです その3

その2からの続きです・・・



さて、来年度(4月)から、川崎市の乳幼児健診の制度に変更があり、その変更点の一つとして、

これまで集団(保健所)で行っていた3か月検診が、個別(医院・病院)で行われることになります。



タイミング的に、この3か月検診は、股関節脱臼発見の最重要ポイントです。

日本整形外科超音波学会の言う「小児科医がしている検診」は、

事実上、この3か月検診(での股関節チェック)を指します。



この3か月健診を逃すと、次の健診は(川崎市の場合)7か月です。

1歳以降で見つかるよりはマシですが、7か月で発見される股関節脱臼は「かなり遅い」。

治療に余裕があるタイミング、という意味で言えば、3か月健診は最後の砦と言えます。



さて、股関節エコーは、当院のウリの一つであります。

何度でも言いますが、そんなに難しいとか特別な手技ではありませんので、

小児に関わる医師の間で、当たり前に普及してくれることを願っておりますが、

現状としては、股関節エコーがウリの一つになってしまっています。

事実、Google先生やBing等の検索エンジンで「股関節 乳児 エコー」などで検索をかけると、

当院のホームページが、びっくりするぐらい上位にヒットしてきます。



そんな当院で3か月健診を行ったお子さんで、股関節脱臼を見逃すことがあっては、

これだけ股脱こだつエコーえこーとうるさく言っている、私の名折れであります。



でありますから、

当院で行う川崎市の3か月健診は、全員、Graf法による股関節エコーを受けて頂きます。



なお、これまで行っている股関節エコーでは、エコー画像をお渡しし見方などを説明しておりましたが、

「健診枠」という時間的制約上、問題がない場合は「問題なし」とお伝えするのみとさせていただきます(※)。

(エコー画像はプリントして「記念に」お渡しします)

もちろん、経過観察や紹介が必要な場合は、詳しく説明し必要な対応を行います。



ですので、

かわかみ小児科で3か月健診を受けたら、

なんか変な台(Grafの検査台、といいます)の上に横向きに寝かされて、

なんだか無理矢理エコーされた! 大丈夫です、としか言われなかった!

などということのないよう、どうかご理解とご協力をお願い申し上げます。




※そもそも他院ではやっとらんし、やらんでも川崎市から頂けるゼニは同じなんでっせ、そこんとこ、あんじょう頼んまっせ(萬田銀次郎風、大阪弁が正しいのかはよくわからんのでツッコミはなしでお願いしまっせ)

先天性股関節脱臼の発見が遅れるのは小児科医のせいです その2

その1からの続きです・・・


②ほとんどの検診は小児科医が施行していることがその(診断が遅れる)要因の一つではないか

  発見が遅れるのは小児科医が検診しているから

  発見が遅れるのは小児科医が検診しているから

  発見が遅れるのは小児科医が検診しているから


大事なことなので3回言いました(ドヤ顔)。ここテストに出るよ!



つまり、

「小児科医が検診をしやがるから、1歳過ぎまでみつからない先天性股関節脱臼例が16%もいる」

という事です。



念のためもう一度申し上げますが、

私がそう言っているのではなく、整形外科のお偉いさんが仰っているんだからね!



乳幼児健診というのは、小児科医にとってはまさに聖域。

小児の生理学や病気に関すること、さらには発達に関すること、社会的なこと、

そういった、小児科医としてのありとあらゆる知識と経験を総動員し統合して行う、

まさに、「小児科医ならでは」の仕事です。

吉野家で言えば大盛りねぎだくギョクですよ。素人にはお薦め出来ない。



その聖域であるはずの乳幼児健診において、こと先天性股関節脱臼については、

お前ら小児科医がイイカゲンなことをするから、発見が遅れて困るんっすよねー、

と言われているわけです。

お前ら手出しすんな、と。150円やるから整形外科医に任せろ、と。



とはいえ、現実的には、小児科医が検診をするほかありません。

他にも山のようにチェックせねばいけないことがある中で、

股関節脱臼の見落としも、可能な限り0に近づける努力をせねばなりません。



もう、めんどくさいから全員Graf法やってしまえ、というのが一番良いのですが、

小児科、とくに開業医で、エコーを所有している方が珍しい(※)現状ですから、

これも、きわめて非現実的です。

 ※さらに、私のようにエコーエコーと大騒ぎして日常診療に活用しているのは奇人変人のレベルですよ


その3に続く・・・

先天性股関節脱臼の発見が遅れるのは小児科医のせいです その1


なんだか突然の、私のようなぢぇんとるまんに似つかわしくない挑発的な題名ですが、

僕ちゃんがそう言っているのではなく、整形外科の偉い先生方がそう仰っているのですよ・・・



当院では、先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)の早期発見のため、

超音波検査(Graf法)を用いたチェックを行っています



この超音波検査でのチェックを行うにあたり、あらかじめ日本整形外科超音波学会(※)主催の

「乳児股関節エコーセミナー」を受講し、Graf法の正式な知識・手技について学んでおります。

  ※私の受講時は、日本整形外科超音波研究会



たしか平成21年の受講でしたが、参加者のうち小児科医は私だけで、他はみなさん整形外科Drでした。

泊りがけのセミナーですので、心細く肩身の狭い思いをするかと思いましたが、

講師の先生方をはじめ、皆さん紳士淑女で大変良くして下さいました。

新潟はいいところですね。空気も酒も美味いし。



昨年末、その日本整形外科超音波学会から、「乳児股関節エコーセミナー受講者の皆さまへ」として、

Graf法の活用状況に関するアンケート依頼が届きました。

その依頼文に書かれた内容がたいへん衝撃的でしたので、一部を以下に引用します。



「第25回の日本整形外科超音波学会学術集会で本セミナーの講師である服部義先生がMulticenter study(発育性股関節形成不全全国多施設調査の結果報告)で発表された内容によりますと、1歳以上での脱臼の発見例が全脱臼患者の約16%であるとの驚くべき数値が出てしまいました。乳児股関節検診を行政とタイアップして施行している地域は我々が把握している限り新潟・下諏訪・射水・江津の4都市しかなく、ほとんどの検診は小児科医が施行していることがその要因の一つではないかと考えております。」



・・・・・・汗


①1歳以上での脱臼の発見例が全脱臼患者の約16%

以前の記事で申し上げたとおり、股関節は生後7か月でおおよそ完成します。

つくっている最中なら治療は比較的容易ですが、出来上がってしまってからの治療は極めて困難になります。

1歳以上での脱臼の発見、というのは、「発見遅すぎ」という事です。

治療をする整形外科サイドからみれば、「こんな遅くに発見しやがって、治療し難くてしょうがないわ!」

という事になります。

発見が遅すぎる、1歳過ぎで見つかる症例が16%もいる! これは衝撃的です。



そして、我々小児科医にとって、さらに衝撃的なのが次です。


その2に続きます・・・
プロフィール

かわかみあきひろ

Author:かわかみあきひろ
川崎市高津区子母口497-2子母口クリニックモール2階
かわかみ小児科クリニック
小児科・アレルギー科
院長  川上 章弘

詳しいプロフィールについては、
かわかみ小児科クリニック公式HPの院長紹介
をご覧ください。

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