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BCGワクチン添付溶剤から規格値以上のヒ素が検出されたとの報道に関しまして

※11/20追記:すでに新しいワクチンが納入されています。以降は新しいワクチンを使用します。

【当院の方針】

1.すでにBCGを受けた方は、何もする必要はありませんし、心配する必要もありません。

2.これからBCGを受ける方は、安心してそのままお受け下さい。そうはいってもケチが付いたワクチンを受けるのはどうしてもイヤという方は、新しいワクチンが出るまで待っても良いかもしれません。ただし、公費の接種期限が迫っている方は、現行のワクチンでの接種を速やかに受けて下さい。

※11/17追記:本日、日本BCG製造株式会社から届いた「お詫びとお知らせ」によると、添付の生理食塩水ではなく、その他の注射用の生理食塩水を用いても構わない(予防接種健康被害救済制度の適用外とはならない)とのことです。つきましては、11/19より新しいワクチンが納入されるまでは、添付の生理食塩水に代わり注射用の生理食塩水を使用して接種を行います


【解説】

すでに各種報道でありますように、乾燥BCGワクチンの添付溶剤(生理食塩液)から、規格値(0.1ppm以下)を超えるヒ素が検出された(0.11~0.26ppm)事が判明いたしました。

該当するロット番号は、KH099~KH278で、出荷時期で言うと2009年4月~2018年11月に出荷された物が該当します。

日本の結核ワクチンは、日本BCG製造株式会社(以下、BCG社)が製造するBCGワクチンのみ です。つまり、2009年4月以降にBCGワクチンを受けた方は全て、該当するBCGワクチンを接種したことになります。

BCG社および厚生労働省によると、ワクチン1本分の生理食塩水(0.15ml)に含まれていたヒ素の量は、最大で0.039μg(マイクログラム)です。接種の際は、(当院では)スポイト1滴分(約0.03ml)を垂らして行っていますので、ヒ素量は最大でも0.0078μgとなります。

お子さんの体重を5kgとすると、ヒ素の許容一日暴露量(注射)は1.5μgです。仮に、0.0078μg全てが体内に入ったとしても、そのわずか0.5%程度に過ぎません。

なお、この「許容一日曝露量」は、「医薬品の元素不純物ガイドライン」に示されているものです。医薬品としての基準ですので、非常に非常に厳しい値です。

ヒ素は多く摂取すれば猛毒ですが、逆に人体に必要な必須元素でもあります。また、ヒ素は自然環境中に広く分布する元素であり、様々な食品や飲料水は微量なヒ素を含んでいます。特にヒジキなどの海産物や、米などに多く含まれており、日本人は食物などから、一日におよそ200μgのヒ素を摂取しています(※)。先ほど申し上げた0.0078μgという数字が、いかに小さく取るに足らないものか、おわかり頂けると思います。

ですので、溶剤から検出されたヒ素は、医薬品として厳しく定められた基準値を上回るものですが、安全性に関しては問題なく、特に対処をする必要はありません。食事から摂取されるよりもはるかに微量なヒ素が検出されたからといって、心配される必要は全くないのです。

ぶっちゃけて言うと、「そんなん気にしとったら、何も食えんし、生きていかれませんがな」ということです。

もう一度、当院の方針を申し上げます。

すでにBCGを受けた方は、何もする必要はありません。繰り返しますが心配不要ですので、デトックスだのキレートだの毛髪検査がどうのこうのといった、怪しい商売に引っかからないようにご注意願います。

これからBCGを受ける方は、安心してそのままお受け下さい。そうはいってもケチが付いたワクチンを受けるのはどうしてもイヤという方は、新しいワクチンが出るまで待っても良いかもしれません。ただし、公費の接種期限が迫っている方は、現行のワクチンでの接種を速やかに受けて下さい。

なお、国としても健康に影響はなく、BCG社としても回収等の対応は行わないとの立場ですので、この件に関しての(日本脳炎ワクチンの特例対象者のような)「救済措置」はおそらく無いと思われます。
※11/24追記:BCG社から自主回収の連絡が来ました

勿論、医薬品としての基準を上回り、国民に不安を与えたをBCG社の責任は重大です。猛省を促したいと思います。
          
※農林水産省(2014)によると、日本人1人あたりの総ヒ素1日摂取量は合計178.2μg

インフルエンザの診断 その14【まとめ インフル更新いったん一区切り】

その13からの続きです (最初から読む:その1へ)

「これぞインフルエンザ」と言える決定的な症状・所見のない(なかった)インフルエンザ。

それが、検査キットの出現で、確実に診断ができるようになりました。

これまで「インフルエンザではない」と判断される可能性のあった人たちも、正確に診断し早期に治療、社会的対応ができるようになりました。

ですので、インフルエンザの検査をするからには、できるだけ陽性(プラス)になることを狙ってします。

「痛い」ことで有名な鼻腔拭い液(鼻ぐりぐり)、なるべく痛くないようにするには、鼻腔底をはわせて、そーっと挿入するのがコツですが、なかなか難しいことも多いです。

また、その他の検体採取法として、咽頭拭い液、鼻腔吸引液、鼻汁鼻かみ液がありますが、いずれも鼻腔拭い液(鼻ぐりぐり)に代わるものではありません。

「痛くない」検査法として「鼻汁鼻かみ液」がありますが、検査感度が低く、出来るだけ陽性になることを狙ってするインフルエンザ検査の目的から外れてしまいます。

ですので、ほとんどの良心的な医療機関では、あえて痛くない鼻汁鼻かみ液ではなく、鼻腔拭い液を選択しています。

当院でも鼻汁鼻かみ液は採用しておりません。どうかご理解下さい。

検体採取時には、できるだけ不快な思いをされないように努めておりますが、状況によりなかなかそうもいかないことが多く、どうかご容赦頂けると幸いに存じます。

さて、そうこう言っているうちに、インフル流行の波もすっかり引いてしまいました。

インフルエンザに限らず、診断・治療につきましては、患者さんお一人お一人の医学的事項のみならず、社会的事項なども含めて「総合的に」最適な答えを出せるよう、悩みながら必死になってやっております。

今後もどうかよろしくお願いいたします。


インフルエンザの診断 その13【ちょっとおまけ メラゾーマいえゾフルーザ出ました】

その12からの続きです (最初から読む:その1へ)

ちょっと脱線して治療の話になって恐縮ですが、その1の脚注で言っていた新薬「ゾフルーザ」が、3月14日に発売になりました。

アビガン(実質処方は不可能)を除き、これまでのインフルエンザの薬(タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ)は「ノイラミニダーゼ阻害剤」と言われるものでした。

ゾフルーザは「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤」と言われるものです。

どちらも舌をかみそうな、正直自分でも何言ってんだかよく分からない感じですが、何が違うのでしょうか。

インフルエンザウイルスは、自分の力では増えることが出来ません。

では、人の体の中でどうやって増えるのか?

インフルエンザウイルスは人の細胞内に入り込み、そこにある「コピー機」(本来は人が自分自身の遺伝情報をコピーするためのもの)を勝手に借りて、自分のコピーを作ります。まさに外道。

作られたコピーは細胞外に出て、それがまた他の細胞に入り込んでコピーを作って、と同じ過程を繰り返すことでどんどこ増えていきます。

「ノイラミニダーゼ阻害剤」は、作られたコピーが細胞外に出られないようにするものでした。

それに対し「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤」は、コピー機を勝手に使えないようにするものです。

いずれにせよ、ウイルス自体をぶっ壊すわけではなく、「増えるのを防ぐ」という意味では一緒です。

ウイルスが「増えるのを防ぐ」薬ですので、これまでの薬同様、発症後できるだけ早く、ウイルスが増えきってしまう前の「発症後48時間以内」に使用するのが望ましいです。

小児にももちろん使用できますが、現状では、体重10kg以上かつ錠剤が内服できることが条件になります。

インフルエンザの流行が急速に下火になってしまったこともあり、発売後のインフルエンザ患者さんが殆どおらず、当院でもまだ2件しか処方しておりません。

最初の一回内服するだけで良いため、錠剤さえ内服できれば、事実上こればっかり処方されるようになってしまいそうですが・・・

続く:その14

インフルエンザの診断 その12【疾患概念の変化と、熱のないインフルエンザ その2】

その11からの続きです (最初から読む:その1へ)

昔の考えで言うと、インフルエンザとはそもそも高熱が出ることが大前提です。

なので、「熱のないインフルエンザ」というのは、「ヘソのある蛙」とか、「西から昇ったお日様が東へ沈む(あっ たいへーん)」(※1)とか、「ぼくは きれいな ジャイアン」(※2)とか言うのと一緒です。

ところが、熱もないしピンピンしてるけど、よーしパパ、インフル検査しちゃうぞー、なんてノリで検査しちゃったとする(※3)。

そしたらまぁ、検査した人たちの中に、陽性(プラス)に出ちゃう人が多少いるわけです。

で、「ね、ね、熱のないインフルエンザが、で、出たーっ!」

ちょっと落ち着け、と。おまえ、「熱のないインフルエンザ」って言いたいだけちゃうんか、と。

同じウイルスが悪さをする場合でも、症状の全く無い人から、重症になる方まで色々です。

インフルエンザウイルスだけ、それから外れて全員同じ症状が出る、なんてハズがありません。

他のウイルス感染症同様、症状のない・罹らない人から、典型的な高熱の人、さらには最重症の人まで、ありとあらゆるグレードの人が居ます。

インフルエンザウイルス感染症の特徴は、その典型的な高熱の人の割合が多いというだけです。

昔の基準で言うとインフルエンザではない、「たいしたことない」症状の人でも、片っ端から検査すれば、そりゃ一定の割合でプラス(陽性)に出る人も当然いるのです。

「熱のないインフルエンザ」というのが、最近になって出現したわけではなく、もともと熱のないインフルエンザ(インフルエンザウイルス感染症)の方はある程度居たはずなのです。

その人たちを、昔は「インフルエンザ」とは言いませんでした。

熱もないのに、この人もインフルだよ!、と言い張っても、お日様が西から昇るわけなかろーが何いっとーとやくらすぞきさん、となるだけです。

最近になってインフルエンザウイルスの検査が可能になり、これまでの概念では「インフルエンザではない」であった人たちを、「(軽症の)インフルエンザ(ウイルス感染症)である」と診断できるようになった。

「熱のないインフルエンザ」というのは、ただ、それだけのことなのです。

続く:その13


※1)元祖天才バカボンの主題歌、と言っても、今の若い人たちには分からんのでしょうね・・・
※2)きこりの泉から脱出しようとする本物のジャイアンは、その後どうなったのでしょうか
※)普通なら、何で熱もないのにインフル検査するんね?、という考えになるはずですし、そもそも検査というのは、医学的な必要性があってはじめて他人に侵襲を加えることが許さるものであって、本当は「ノリで検査する」的なことがあってはいけないんですけど。

インフルエンザの診断 その11【疾患概念の変化と、熱のないインフルエンザ その1】

その10からの続きです (最初から読む:その1へ)

さて、「熱のないインフルエンザ」という、不思議な?言葉があります。なにそれこわい。

その1の記事で、インフルエンザというのは昔は雰囲気でテキトーに診断していたんですよ!と申し上げました。

昔のお医者様がたの名誉のために申し上げますが、昔のお医者様がたがいいかげんだったという意味ではありません。

正確に言うと、昔のお医者さんは昔の基準で、インフルエンザをきっちり診断していたのです。

昔の「インフルエンザ」というのは、そもそも、寒くて乾燥した季節に高熱が出てぐったりして酷いと命に関わるような物凄く勢いの強い風邪を引く人たちがたくさん出て、しかもそれがどんどん広がって(流行して)いく、これがまさに、ザ「インフルエンザ」という病気だったのです。

ですので、ちょっと風邪気味だけど熱はありません、という人は、そもそも「インフルエンザ」という病気ではなかったのです。

夏の時期に高熱でグッタリした症状が出ても、それも「インフルエンザ」という病気には全く当てはまらなかったのです。

ところが、「インフルエンザ」という病気を起こしている原因「インフルエンザウイルス」が発見され、インフルエンザという疾患の概念が大きく変わりました。

昔のインフルエンザとは、「冬場に高熱が出てグッタリする病気」でした、が。

今のインフルエンザは、「インフルエンザウイルスが悪さをする病気(インフルエンザウイルス感染症)」(の総称)になったのです。

しかもそのウイルスが居るか居ないかが現場ですぐにわかる検査キットが発売されてから、話がさらにややこしくなりました。

続く:その12

プロフィール

かわかみあきひろ

Author:かわかみあきひろ
川崎市高津区子母口497-2子母口クリニックモール2階
かわかみ小児科クリニック
小児科・アレルギー科
院長  川上 章弘

詳しいプロフィールについては、
かわかみ小児科クリニック公式HPの院長紹介
をご覧ください。

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